役員11人で40時間超の徹底対話。
社内の抵抗を乗り越え、
6万着のヒットを生んだ「決断」の正体

青山商事株式会社
代表取締役社長 兼 執行役員社長 兼 OMOリテール本部長
遠藤 泰三 氏
Special Interview Vol.5 青山商事株式会社 代表取締役社長 遠藤 泰三 氏 Special Interview Vol.5 青山商事株式会社 代表取締役社長 遠藤 泰三 氏
Special Interview Vol.5 Special Interview Vol.5

全国に700店舗以上のビジネスウェア専門店の運営をはじめ、総合リペアサービス、カード、不動産など幅広い事業を展開する青山商事グループ。創業60年以上になる同社では、2023年から現在まで、経営幹部や管理職を対象にチームボックスのトレーニングを導入いただいています。導入前は各部門の個別最適や事なかれ主義が課題だった組織で、いまでは部署の枠を越えた提案が社長のもとに日々届くように。さらに、役員11名・40時間超の対話から生まれた1万2980円の「みんなのスーツ」は、発売6カ月で約6万着を販売するヒットとなりました。この4年間で、組織と人にどのような変化が起きたのでしょうか。2025年6月に代表取締役社長に就任し、自らもトレーニングを受けた遠藤泰三氏にお聞きしました。聞き手は、チームボックス リーグマネージャー/グローストレーナーの小暮裕美子です。

Profile

青山商事株式会社 代表取締役社長 兼 執行役員社長 兼 OMOリテール本部長 遠藤 泰三 氏
青山商事株式会社
代表取締役社長 兼 執行役員社長 兼 OMOリテール本部長
遠藤 泰三 氏
1990年青山商事入社、1997年せんげん台店店長、2000年から営業部、人材開発部課長などを経て、2016年人事部長、2017年執行役員人事部長、2018年執行役員人事戦略本部長、2021年執行役員管理本部長、2025年代表取締役社長兼執行役員社長に就任。
チームボックス リーグマネージャー/グローストレーナー 小暮 裕美子
株式会社チームボックス
リーグマネージャー/グローストレーナー
小暮 裕美子
ユニ・チャーム株式会社に一般職で入社後、最年少でジュニアボードメンバーに選出。総合職へ転換し、経営企画、人事企画、評価・育成など幅広い人事領域経験。2005年に独立。大企業から中小企業まで、経営層・管理職のコーチングや研修に従事。2019年よりチームボックスグローストレーナーとしてリーダー育成に携わっている。

「このままでは茹でガエルになる」
―― 会社の当たり前は本当に正しいのか

小暮 裕美子(以下、小暮):チームボックスのトレーニングを受けていただいて、今年で4年目になります。改めて、2023年に導入を決めたきっかけを教えていただけますか。

遠藤 泰三 社長(以下、遠藤社長):当時、創業60周年を迎えて業界トップの販売実績を誇る一方で、過去の栄光や知見に重きを置いてしまい、「時代の変化や未来を見据えた柔軟な発想がなかなかできない」という課題がありました。当社の経営幹部は現場の生え抜きが多く、成功体験が強い傾向にもありました。

成功体験が強すぎると、新しいことへのチャレンジができなくなります。
例えば、最近では揃いのスーツではなく、ジャケットとパンツをコーディネートする人も増えています。しかし、社内にはスーツはセットで販売する、店舗にはお客様が来店されるものといった意識も残っていたと思います。

また、事なかれ主義になっていたり、各セクションの個別最適が重視されて全社視点で考えられていないといった課題もありました。当時の社長(現・代表取締役会長)が、このままでは危機感が欠如した「茹でガエル状態」になってしまうという懸念をもっていたため、まずは上層部向けに外部のトレーニングを入れようという話になりました。

小暮:課題の解決にあたって、チームボックスを選ばれた理由を教えてください。

遠藤社長:選定にあたって、研修を提供している複数の会社に話を聞きましたが、チームボックスが重視している「アンラーン(※)」の考え方に興味を持ちました。「会社の当たり前は本当に正しいのか」と疑問を持ち、ゼロベースで考え直す。その変化への期待感がありました。

そして、最終的な決め手になったのは、当社に寄り添ってもらえると感じたからです。
「青山商事は、これまで外部のリーダーシップやマネジメント研修をほとんど受けてこなかったので、かなり大変だと思います」と伝えたとき、「何があっても、すべて青山商事に合わせます」と力強くおっしゃったことが印象的でした。

※アンラーン=これまで培ってきた成功体験や信念、慣れ親しんだ習慣を手放し、新しい考えを取り入れること
小暮:外部の研修をほとんど受けてこられなかったということで、内向きになっているのではないかと感じていました。ただ、最初に経営資料や業績の状態、社内の軋轢まで包み隠さず開示してくださいました。その様子を見て「本気で変わろうとされているんだ」と感じたことを覚えています。

1期は、執行役員5名に向けたオールカスタマイズのトレーニングを行いました。2泊3日の合宿から始めて、慶應SFCの学生を呼んで執行役員の皆さんに「青山の未来」を語っていただき、学生から逆質問を受けるという場もつくりました。

上層部への「耳の痛い指摘」から始まった、組織の横軸をつなぐ共通言語

小暮:トレーニングが始まったとき、上層部の方はどのような雰囲気でしたか。

遠藤社長:トレーニングの合間に行われた「ハーフタイム」というグローストレーナー(※)との1on1が、特に刺激的だったようです。一定の役職につくと他者から指摘されることが減ってしまい、自身の価値観を「正」としてしまいがちです。それを外部の方からフラットに指摘されるため、客観的な自己分析につながったと思います。

※グローストレーナー=リーダーの成長の責任を担うトレーニング伴走者
小暮:実はトレーニングの設計も、青山商事さんに合わせて大きく変えました。通常Teambox LEAGUEの場合は、テンポよくコンテンツを進めていくんですが、1期はディスカッションの時間を長くとって、まず書き出してもらうことを重視しました。

印象的だったのは、会社の事業や今後どうしたいかはすらすら書けるのに、主語を「あなた」に移した「あなた自身はどうしたいですか?」という問いかけに対しては、急に手が止まることでした。会社の看板を一度外したとき、一人のリーダーとして何を成したいのか。その本音の部分を、私たちはじっくりと紐解いていきました。

上層部がトレーニングを受けたことで、社内にはどのような変化がありましたか?

遠藤社長:導入前は、各部門の個別最適が優先され、部門を越えた対話はほとんどありませんでした。それが今では、社内の言語が共通化したと感じます。例えば、「対話と会話の違い」「成果と成長の違い」といった、トレーニングで学んだ言葉が、会話に自然に出てきます。 例えば、「会話は互いに同意し合うやりとり、対話は話すことで新たな気づきや変化が生まれるやりとりである」と学びましたが、私自身も営業店の新入社員研修で「会話じゃなくて対話しよう」と伝えることがあります。

3期からは副部長クラスも参加していますが、チームボックスのトレーニングで青山商事の未来を考えたことをきっかけに、自発的に社内で「未来会議」というものを立ち上げる動きもありました。参加したメンバー同士がお互いの性格や思考を共有したことで、会社の横軸がつながってきたと感じます。

以前の当社では考えられなかったことですが、最近では、自分の担当部署の枠を越える新たな提案が日々私のもとに寄せられていて、スケジュールが常にいっぱいです(笑)

小暮:遠藤社長も、社長に就任される前にチームボックスのトレーニングを受けられました。実際に受講して、どのような気づきや変化がありましたか?

遠藤社長:改めて実感したのは、自分の発言が周囲に与える影響の大きさです。私は威圧的に話しているつもりはないのですが、グループワークで意見を言うと、みんなが同意してしまうので、意見をあまり言いすぎないように気をつけていました。

小暮さんからは、1on1のときに「最後まで話を聞いてください」と指摘されたこともありました。私は相手が話している途中で、自分の経験から答えが見えてしまうから、つい発言してしまう。でも、話を遮られた人は、自分の意見を言えなくなってしまうのだと気づきました。

小暮:遠藤社長はそれまで管理本部長として、多くの全社的な施策を実行してこられていたので、「意志を決めたらやり抜く人だ」というイメージを、周囲から強く持たれていたのだと思います。

遠藤社長:トレーナーが小暮さんでよかったです。本音で話せたし、自分でも気づいていなかったことを引き出してもらいました。

小暮:1on1で、遠藤社長はいつも本音で話してくださいました。トレーニングの最後に行うPOC(プレーオフセレモニー)では、「このトレーニングで何を学び、これからどう生きるか」を宣言していただきますが、遠藤社長の姿が印象的でした。

遠藤社長:いつもは感情をコントロールしているので、自分でもあんなに感情が出るとは思いませんでした。チームボックスのトレーニングを振り返り、内側からこみ上げてくるものがありました。

小暮:POCではグローストレーナーからフィードバックをお伝えしますが、遠藤社長には「あなたは人たらしです。そして、この人についていきたいと思わせる男気がある。そういうリーダーです」とお伝えしましたね。

「次は自分も選ばれたい」
経営人材育成の場で芽生える、次世代リーダーの能動性

小暮:チームボックスのトレーニングにおいて、遠藤社長が特に価値を実感されているのはどの部分でしょうか。

遠藤社長:三つの価値があると思っています。一つ目は、過去の成功体験から脱却し、自分自身を客観的に捉えられるようになること。二つ目は、トレーニングに参加したメンバーが「あの人についていきたい」と思えるリーダーへ成長できることです。
そして三つ目は、未来の青山商事について改めて考える機会につながり、社内に共通言語が生まれ、目線が統一されることだと感じています。

社内でも、チームボックスのトレーニングが経営人材の育成の一環だと知られるようになり、「チームボックスのトレーニングに入りたい、自分も選ばれたい」という声を聞くようになりました。

AI時代に求められる「周囲を主役にする人間性」
――社長自らが現場を行脚する理由

小暮:ありがとうございます。そのように言っていただけて大変光栄です。経営人材育成の一環として、社内でそれほど深くチームボックスのトレーニングが浸透し、期待されているのですね。そうした変化や共通言語が生まれていく中で、遠藤社長がトレーニングを受講する皆さんに「ここだけは一番にもってほしい」と思われる、コアとなる部分についてお聞かせください。

遠藤社長:AI時代だからこそ、大事なのは「人間性」を強く持ってほしいと考えています。仕事ができることは大事ですが、周囲への配慮と巻き込む力をもつ人こそがリーダーになるべきです。
何かを実現したいと思っても、一人では何もできません。自分のやりたいことを整理・言語化して周囲に伝え、情熱を持って巻き込んでいく必要があります。

そして、リーダーとして成果を出して上司に褒められたときに、自分の成果にするのではなく、「〇〇が頑張ったから、この結果が出ました」と言えるかどうか。そこに人間性が表れます。

小暮: その「周囲を主役にする」というお考えが、遠藤社長ご自身の行動にも表れていらっしゃいますよね。遠藤社長は従業員向けの名刺をわざわざ作って、全国の店舗をまわっていらっしゃると伺いました。

遠藤社長:一人ひとりの従業員の力で、青山商事は成り立っています。そのことを伝えたくて、社長に就任してから全国の店舗をまわっています。

販売6ヶ月で約6万着、役員11名・40時間超の対話が生んだ「みんなのスーツ」

小暮:そうして現場にも足を運び続けられて、社長就任から1年が経ちました。改めてこの1年を振り返ってみていかがですか。

遠藤社長:チームボックスのトレーニングでも学んだことですが、「判断」ではなく「決断」をする機会が増えました。判断は「すでに起こったことを正しいかどうか、良いか悪いかで評価する」のに対して、決断は「早さと強さを重視して、これからの行動について意思決定する」ことです。
日々、自分がした決断は正しかったのかと振り返っています。しかし、決断を躊躇すると機を逃すこともあります。

この1年に後悔がないかと言われたら、業績の面では悔しい気持ちがあるのは確かです。しかし、新しい取り組みも始めることができました。

具体的には、執行役員11名を集めて、40時間以上対話をして、「今後の青山商事をどうしていくか」を徹底的に話し合いました。そして、会社の課題とお客様目線を議論し、1万9900円前後が主流の紳士服業界で、1万2980円の「みんなのスーツ」という商品を、過去最速となる約5カ月で開発しました。品質を保ちながらお買い求めしやすい価格帯を実現するという難しさから、社内からは少なからず抵抗もありました。しかし、お客様のニーズが多様化する今、よりお手頃な価格帯にも対応できる商品ラインが必要だという確信のもと、決断しました。

その結果、2025年11月の販売開始から6カ月で約6万着を販売しています。正直なところ、ここまで売れるとは思っていなかったのですが、メディアにも大きく取り上げられ、外部からの評価に手ごたえを感じています。みんなで本気で対話して、お客様のことを真剣に考えた結果です

小暮:まさに、本気の対話と思い切った決断が「6カ月で6万着」という素晴らしい成果に結びついたわけですね。そうして組織の中に「対話の文化」が根付きつつある今、遠藤社長が目指す人材育成への向き合い方について、ぜひお聞かせいただけますか。

遠藤社長:「会社のために成長しなさい」という発想の研修は、参加者の心理的ハードルが高くなると考えています。まず個人の自己成長を促すマインドが育ち、それからリーダーになり、さらに経営人材へと育っていきます。その結果として、会社も自然と成長していきます。今後は、このチームボックスの考え方を、本部・本社だけにとどまらず、営業店の現場にまで届けていきたいですね。

小暮:本日は貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。これからも青山商事様の目指す未来に向けて、共に歩ませていただければ幸いです。
スペシャルインタビューをシェアする
各サービスについての資料請求はこちら
Download documents
各サービスや講演、取材についての
お問い合わせはこちら
Contact