吉田:ノーザンファームは、1994年に私の父が祖父から譲り受けた牧場をもとに創業したのが始まりです。現在では、従業員数が900名を超える組織へと成長しましたが、組織が急速に拡大していく一方で、規模が小さかった頃とは異なるマネジメントが必要になりました。より良い企業を目指してさまざまな環境を整えようとしてきたものの、自分たちだけで変えていくことは難しく、外部からのサポートが必要だと感じていたんです。そんなときに、チームボックスのことを知り、マネジメントスキルもリーダーとしての姿勢も両方を学ぶことができるリーダー育成プログラム「Teambox LEAGUE」の導入を決めました。
瀬田:「Teambox LEAGUE」では、まずTB Scanという組織診断ツールを使い、従業員のみなさんが感じている組織の強みや弱みを可視化するというプロセスがあります。自社の強みや弱みが可視化されたことで、何か変化はありましたか。
吉田:これまでは、あえて言葉にしなくてもみんなで頑張っていけば結果が出る、という考えでやっていたところがありました。しかし、会社の規模が拡大するにつれて、言語化することの必要性を感じるようになったんですね。私自身は、ある程度自分の考えを言葉にできている方だと思っていましたが、トレーニングを受けて、本当の意味で言語化できていなかったことに気付かされました。
吉田:私自身は、「弱さをさらけ出す」ことが非常に苦手だということに気付かされました。しかし、そこから3カ月間トレーニングを続けるうちに、今まで言葉にできていなかった胸の内を言語化できるようになったと思います。一緒に参加したリーダーたちの関係性においても、心の動きを共有できるようになったと感じています。これまでは、自分の気持ちを出さず、周りに合わせる方が問題を解決できるものだと思っていましたが、「Teambox LEAGUE」のトレーニングを受けたことを通じて、組織をより円滑に回していくためには弱さや本音までをさらけ出すことも必要なのだと気付かせてもらいました。
瀬田:上位層6人のリーダーの皆さんそれぞれが、自分の思いや本音の部分まで自分の言葉で語っていただき、皆さんの多種多様な個性がより、明らかになっていきましたね。相手の感情を知ることが相互理解につながると思います。吉田さんにとって「感情を言葉にする」という点では何か変化がありましたか。
吉田:私はもともとネガティブな感情を持っていないタイプだと思っていたんです。ところが、最初の1カ月目のFeeba(※)で毎日振り返りをして、自分の感情まで言語化することを繰り返していくと、自分にもネガティブな感情があるし、それは当然なことなんだということに気付きました。
※Feeba=自身の目標設定に対する振り返りと部下からのフィードバックによって振り返りの質を高める行動変容支援ツール
吉田:Locker Roomでは、私が普段話さないような自分の感情の部分まで正直に話したことがきっかけとなり、他のリーダーたちも次々と自分の感情をさらけ出すようになったんです。さらけ出すことの重要性を実感した瞬間でしたね。参加した他のリーダーたちも、大きく変わったと思います。Locker Roomでは回を重ねるごとに、どんどん濃密な関係性を築いていけました。
瀬田:吉田さんはもともと「傾聴と承認」や「フォロワーシップ」がすごく得意な方だという印象があります。今回のプログラムは、ご自身のよい部分を伸ばし、新たに自分らしいリーダーシップのあり方を見つけるヒントになりましたか。
吉田:傾聴と承認については今までも心掛けていて、ある程度できていたとは思いますが、今回のトレーニングで本質的な部分をきちんと学ぶことができました。フォロワーシップという面では、場長から副代表になったときに、自分が動く従来のリーダーシップから、みんなが気持ちよく働けるためにどのように動けばいいかを意識するようになりました。Half Timeの中でこの話をしたときに、グローストレーナの方にこうしたリーダーシップが「サーバントリーダーシップ(※)」であることを教えてもらいました。
※サーバントリーダーシップ=「リーダーはまず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」という考えのもとに生まれたフォロワーシップ型リーダーシップのこと。部下の能力を肯定し、お互いの利益になる信頼関係を築くスタイルのリーダーシップ
瀬田:このトレーニングを通じて、参加リーダー6人のチームに起きた一番大きな変化は何だったのでしょうか。
吉田:当初は、トレーニングを受けることに対して多少の温度差があったものの、各自が自分なりの課題を見つけ、課題に向き合って学ぶことができました。トレーニングが進むにつれてみんな本当に変わっていって、終盤になるとFeebaでも濃密なやり取りができるようになりました。3カ月間のトレーニングを終えた後は、今まであまり言えていなかった話をしたり、みんなの意見を聞くことができるようになって、見えていなかった課題の部分まで、お互いに共有できるようになったと思います。「Teambox LEAGUE」のおかげで、自分たちだけではできなかった変化を起こすことができました。
吉田:43人と大人数だったため、スタート時点でトレーニングに臨む姿勢にも、Season1の時よりさらに個人差があったと思います。始まってから戸惑いを感じていた人もいましたが、真摯に向き合ってくれている人が多いと感じました。最後の宣言では、みんなが一生懸命自分に向き合って、確実に何かを学び、自分のために活かそうとしていることが伝わってきました。また、各地の牧場で働いていて、普段顔を合わせたことのない人たちが一緒に学び、つながりができたことも良かったと思います。実際、Season2に参加し、今まで関わってこなかった人たちと本音で話し合えたのは良い経験だったと言ってくれたメンバーもいます。組織を横断して関わり合うということの大切さを実感しました。
瀬田:Season2は、「勝ちて和す」というテーマで、まさに「和=つながり」を作ることを目的としてプログラムを実施したので、そのような声があったのはすごくありがたいです。Season2では、傾聴・承認・質問に加えて、フィードバックのやり方など、より現場で使える技術やスキル、考え方などを中心にトレーニングしていきました。Teambox LEAGUEが目指す、「わかるからできるへ」という理念通り、理解して終わりではなく、現場で実践できるようになることを徹底したリーグになったと思います。吉田さんから見て、参加した主任の方々に何か変化はありましたか。
吉田:「主任である自分たちが組織を変えていこう」という動きが、トレーニングに参加した人を中心としてそれぞれの現場で始まっていると聞いています。個人が変わろうとしていることが自分のチームに良い影響を与えるケースもありますし、また、変わろうとしている上司を見て、チーム全体が変わるという良い影響も見られます。まだ動き出したばかりですが、それぞれの部署を良くする一歩になっていくと思いますし、最終的にはノーザンファーム全体が良くなる第一歩だと期待しています。
瀬田:「Teambox LEAGUE」では、最もアンラーン(※)し、成長した方を「MUL(Most Unlearning Leaders)」として皆さんにご紹介しています。当事者意識を持って取り組み、変化された方のストーリーを聞くことが気づきにつながったり、他者の取り組みを通じて擬似体験することが大きな意味づけとして変化する効果があるので、MULを紹介してからの方が学びも加速したという印象を持ちました。ただ、私たちが提供するコンテンツを学んでいるだけでは無し得ないような、学びの深まり方をしていたように思います。
※アンラーン=これまで培ってきた成功体験や信念、慣れ親しんだ習慣を捨て去ること
吉田:そうですね。例えば、Feebaに関しても、ほかの人の書き込みを見て徐々に書く内容が深まっていったり、MULを受賞した人のコメントを聞いて刺激を受けたりする様子が見受けられました。我々のSeason1のときもそうでしたが、最初は何かを教えてもらえるものだと思ってトレーニングに参加したところがあったんです。実際にトレーニングが始まってから、こんなにアウトプットしていかなければならないものなのだということを知って、驚きました。これまであまりアウトプットする機会はありませんでしたし、おそらく多くの日本人が苦手なことでもあると思います。しかし、参加者の最後の宣言を聞いたときに、このトレーニングを受けたからこそ、しっかり自分の言葉で言語化できるようになっていたと感じました。
瀬田:本当に、43人の主任の皆さんのプレイオフセレモニーでの宣言は素晴らしかったと思います。「Teambox LEAGUE」を通じて、組織の横のつながりもできましたね。今後ノーザンファームさんがさらに成長されていく中で、このつながりをどう活かしていくかによって、血の通った組織になるのかどうかが変わってくるのではないかと思います。
吉田:会社が急速に拡大すると、同じ組織で働いていてもお互いの顔を知らないということが起こりがちです。ただ、やはりお互いの顔を知っていて、話をしたことがある人との方が、より深いやり取りができると思います。今後は、Season2の最大の価値と言える、ここで生まれた横のつながりが途切れないような仕組みをSeason1を受けたメンバーと、Season2を受けたメンバーの全員で作っていきたいですね。
瀬田:プレイオフセレモニーの宣言では、「場長になりたい」「ノーザンファームの中心になれるぐらい頑張っていきたい」という主任の言葉も出てきて、未来のノーザンファームさんをつくっていくことに対して使命感を持っている方が多いことに驚かされました。
吉田:そうですね。私も、みんなの宣言を聞いて、あらためて各自のポジションに対する責任感の強さとそれを超えるものがあることに気付かされました。私自身、そういう彼らのひたむきさや、牧場や馬にコミットしてくれている気持ちにどうしたら応えられるのかということを考えさせられる場にもなりました。
瀬田:当初は馬の専門性だけでは補えない、多様な人をマネジメントすることの難しさをどのように克服するかという課題もありましたが、日々生き物を扱っている専門家集団だからこそ気付けることや視点・強みなどがあるんだと感じました。ノーザンファームさんのリーダーの皆さんには、専門性があること以上に力をつけて、今よりも進化して、よりよい組織をつくっていくことにチャレンジしてほしいと思います。
吉田:組織が大きくなり、求められるタスクが増えてしまったがゆえの悩みは一時的にあるとは思いますが、もともと持っている彼らの良さや能力を消さずに、みんなが成長し続ける組織にしていきたいです。
瀬田:「Teambox LEAGUE」のSeason2は、吉田さんや中島さんからの「未来の牧場のことを6人で考えるのではなく、主任の中からも一緒に考えられるメンバーを見つけ、増やしていきたい」という言葉からスタートしました。トレーニングが終わったときには、組織に対する多様で主体的な考えを持つメンバーが増えましたし、さらに参加者同士の間に「和」も生まれたと思います。最後に、この主任たち、もしくはここでできたチームのつながりに対し、どのような期待があるか教えてください。
吉田:「Teambox LEAGUE」のトレーニングを受けたことで、もともと自分の考えを持っているのにうまく言語化できなかった人も、アウトプットの方法を学んで仕事に活かせるようになりました。他のメンバーに刺激されて、変化が起きた人もいます。今後は、彼らから出される意見を未来のノーザンファームづくりに活かしたいと思っています。新しいリーダーにもどんどん出てきてもらって、一緒に未来をつくっていきたいですね。Season1・Season2は終わりましたが、私たちの組織づくりはこれで終わりではありません。「Teambox LEAGUE」で得た学びを活かした組織づくりを進化させ、学んだことをみんなが意識的に実践できるような仕組みも作っていきます。
瀬田:6人から始まり、43人に広がったTeambox LEAGUEの学びを、ノーザンファームさんの成長に大いに活かしていただきたいです。皆さんが組織文化を作っていくことに対して、しっかりとしたお考えを持っていることが分かったので、ここから先は組織全体で対話する機会を増やしていけると、ノーザンファームさんの組織全体に皆さんの考え方や価値観が浸透していくと思います。私たちも継続的にご支援させてください!本日はお話をお聞かせいただきありがとうございました。