オムロンヘルスケア株式会社
OMRON HEALTHCARE Co., Ltd.
業種:製造業
従業員数:3000人以上
※ このページ内における会社情報や所属・役職などは 取材当時のものです。
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健康機器の開発・販売などを行うオムロンヘルスケア株式会社様は、東証プライム上場のオムロンの完全子会社。同社の開発部門において2016年から17年にかけて2シーズンにわたりTeambox LEAGUEを導入いただきました。その理由と導入後の組織の変化について、同社の執行役員である大西喜英様に話を伺いました。

「正解探し」で終始する理系的習慣がネックに

大西さんはTeambox LEAGUE(以下、TBL)の導入を決めた当時、商品開発統轄部門長。生み出したアイデアを結集して新商品を世に送り出していく、いわば大動脈のような部署だと思います。そこにTBLの導入を決めた背景には、どんな課題を抱えていたんですか?

開発を担う部門には、いわゆる「理系」人材がゴロゴロいるんです。みんな、自然科学のフィールド、カルチャーにどっぷりと浸かって来た人たち。そうすると、自然科学の世界ですから、何かコトに当たろうとしたときに、「答え」や「正解」を探そうとしてしまうんです。それと、学会や論文発表で鍛えられていますから、どんな質問を投げかけられても答えられるように、理論武装をしておかなくちゃと考えがち。周到な準備をしておいて賢く振る舞おうとする行動が、習慣化している人たちなんです。

大学の研究職ならそうした習慣は大切ですよね。でも、企業の場合は、それがネックにもなることもあるんでしょうか?

ビジネスの現場では、「答え」も大事だけれど、その場その場の応答も大事。私としては、次世代のOHQ(オムロンヘルスケア株式会社)の開発を担うリーダー人材をしっかり育てていこうということで、人材育成のあり方を模索してきましたから、正解探しの能力だけでは不十分だと。スピード感も必須なんです。例えば、我々の開発プロセスで言うと、自分の考えた設計の根拠を裏付ける思考力は、必要な特性ではあるんです。ただ、考え込んだ末にようやく発言する、下手をすれば、考えているだけで発言せずに終わってしまう開発者もいて、殻を破るプロセスが必要だと常々考えてきました。年間に何千万台という健康機器を世の中に送り出しているわけですから、アウトプットのところが「閉じっぱなし」では、いずれ追いつかなくなる。こと、グループリーダークラスとなれば、なおさらです。

具体的に、TBLのどんな部分に特に魅力を感じたのでしょう?

短時間に考え、アウトプットを出すというワークを繰り返すところです。例えば、30秒以内に書き出してとか2分間でチームで共有してとか。みんな最初は、それが全くできないんです。見ていて笑うぐらい。周りの様子を伺っている人。周りが何か書いているのをみて、自分も書かなきゃいけないかなと渋々書き始めるんだけど、その頃には時間切れになって、ワーッと慌てる人。少し段階が進むと、その人たちは戸惑いながらもだんだんと自分を素直に出していいんだという思考の仕方に変容していった。書き出すのは苦にならなくなって、今度は消したり書き直したりという試行錯誤が始まる。それもやっぱり、人に「見られている」という緊張感があるからこそ引き出される試行錯誤なんですよね。

実は私たちがTBLを始める前に、当社の営業部門が先に導入していました。「先輩」である営業部門の評判がよかったので、私たちにも横展開する形になったのですが、蓋を開けてみれば、これはむしろ開発職に向いたトレーニングだと実感しましたね。

「先輩」である営業部門よりも伸び代が大きそうだと?

はい。そもそも営業部門に集まる人材は、もともとたくましいというか、常に数字の目標を与えられていて、目の前にお客さんもいて話をしなくてはならないのですから、何が正解か分からないなかでもアウトプットし続けなければならない。コミュニケーションからは常に逃れられないわけですね。その意味では、普段から鍛えられている。現場で常に最適な答えを出さないといけないし、相手は待っていてくれないし。それに対し、我々の部門では日常的にコミュニケーションを強化する環境が圧倒的に少ない。だからこそ、実践を積み重ねるTBLが効くんじゃないかと思いました。

「J(ジャージ)会」が組織の接着剤に

トレーニングの最初に「TBスキャン」という組織診断が行われますが、そこで炙り出された組織の弱点とは?

我々の場合、「振り返り」と「見える化」という2つの指標については、極端に診断内でのスコアが低かったんですね。特に、「振り返り」というのが、びっくりするぐらい低かった。良い意味で言えば、後ろは振り返らず、前を向いてどんどん新しいことを試し続ける。悪く言えば、やりっ放し(笑)。

また組織として、「見える化」の評価が低いというのは、周りの人たちが何をやっているのか把握していない、ということ。例えば、同じ開発部門のリーダーでありながら、周りの部門で何をやっているのかをわかっていないという人たちが結構いました。TBLに参加したメンバーには、新卒でOHQに入社した人が半分、キャリア採用で入社した人が半分いたんです。それに、我々が開発するのはもともと「機器」が中心だったのに対し、最近では機器に「通信」が付き、その通信の中では「データ」が動いていて、サービスのためのシステムとかアプリを開発する部門というのも増えてきている。となると、専門性が分かれてきて、機器の開発をする部門のリーダーとシステムの開発をする部門のリーダとが「顔は知っているけれど、まともに話をしたことがない」とか、「システムのリーダーが機器開発の実験室に入ったことがない」とか、同じ部門内でも細かな壁がいろいろとあるということを今回再認識しました。

大企業になるほど、組織間のつながりの強化が課題になりますね。

OHQは、オムロンの中では昔からそれほど大きな組織ではなくて、どちらかというと傍流でした。ある意味、中小企業のたくましさみたいなものも持っていたはずなんです。それが、売上高が1千億円を超える規模になってくる過程において、「見える化」が課題として浮上してきたのではないかと思うんです。

今回のTBLにおいて、我々は組織間の壁をなくすために、コーチが言うところの「Make the Chain」(業務上のつながりを作ること)、「Be the Chain」(リーダー同士のつながりを作ること)を明確なテーマとして徹底させることにしました。

リーダー同士のつながりを作る上で、具体的な効果を発揮したのはどんなアクションでしたか?

我々に限らず、TBLではトレーニング時に参加リーダーが誇りを持って一体感を持つという理由でジャージを着るのが通例。ただ、うちの場合は特に、組織横断の雰囲気づくりという意味では、ジャージというツールが大きな効果を発揮していましたね。トレーニングの中で大きなテーマとして挙がった「Chain」という言葉を浸透させ参加するリーダー達の一体感を高めるために、集合トレーニング後の懇親会の場で「毎週火曜日を“ジャージの日”として、その日はジャージを着て仕事をしよう」ということになった。そして、ジャージを着ている人同士が積極的にコミュニケーションを取り合うように決めた。

業務時間内に紺、青、白のジャージを着た参加リーダー十数人が同じフロアの真ん中に集まって話をしているような場面もあって、それはそれは目立ちました(笑)。その後、ジャージを着た火曜日の夕方には、「J会」(ジャージ会)と称して、語らうのが定例に。実は「J会」は、TBLが終了した今でも続いています。

開発部門の普段の仕事着は?

普通のシャツとスラックスというパターンが多いですね。ジャージは多分、就業規則を厳密に読み込んでいくと、NGなのかもしれないです(笑)。これを着た時だけは、「トレーニングしているぞ!」という気分を共有できたのではないでしょうか。

「ジャージ効果」はどんなところで発揮されたと感じましたか?

「J会」では見渡す限りジャージだらけで、見た目にも一体感のある「場」が生まれていますから、自分の意見をより素直に出せるようになる効果があったのではないかと。その分、TBLでよく使われる言葉である「UNLEARN」――これまで学んだことをいったんゼロリセットにして、学び続ける姿勢。これがしやすくなったというのはあると思います。

特に、「すでに自分は深く知っている」という自負心を持っていたり、「自分が自分が」と承認欲求が強かったりした、理系にありがちなタイプのリーダーが、ガラリと変わっていく様子も目の当たりにしました。どちらかといえば他人を責める傾向が強かったのに、「まずは自分から」と変化のベクトルを自分自身に向けようと努力する姿が見受けられたり。

TBLでは、日々の業務を「本番」と位置づけていて、そこに挑むための覚悟とスキルを身につけるための場として「Locker Room」という集合トレーニングが行われるんですが、その練習のために、家族の前でプレゼンをして、家族、それも小学生の子どもさんから指摘してもらって準備をしてきたというリーダーが現れました。子どもからでさえ学べる姿勢になれたというのは、殻を脱ぐことができたというか、大きな変化ですよね。

 

バイアスをかけず「行動ベース」で人の成長が見えるように

大西さんご自身も集合トレーニングである「Locker Room」を何回も見学されていたとコーチから聞いています。ご自身にも変化がありましたか?

私はあくまでも見学者という立場だったんですが、メンバーの発表を見たり、会場の後ろの方で自分でもトレーニングの一部を実践してみたりするうちに、学んでいく言葉の一つ一つが、全部自分に跳ね返ってくるような気分になりました。「そもそもお前がちゃんとがんばれ。成長せい!」と言われているみたいに。

次世代リーダーを育てるのが私のミッションなんですが、以前よりも相手に対するバイアスが取れ、「行動ベース」で変化が見えるようになりました。「この人は、こんな考えを持っている人なんだな」と深い考えを汲み取れるようにも。TBLというプログラムをベースにあらゆる人たちとのコミュニケーションが増えたことは間違いないです。私自身、トレーニングを通じてコーチやリーダーたちから、「もっとこの人と話したほうがいい」といったアドバイスを何度も受けていましたから。

あと、当時TBLに参加していたリーダーたちの変化を目の当たりにして、参加リーダーの上司となる部長たちから「このトレーニングでは、何をしているんだ?」と見学する人が増えてきました。

Locker Roomは、一回に4時間通しで行うなど長時間のトレーニングですが、部長職の方たちもしっかり見学されていましたね

はい。職場で変わろうとしているリーダーたちがいて、部長の立場で現場を応援するような雰囲気が生まれてきました。リーダーたちのリーダーは上司である部長であるわけで、そもそもがTBLの根本の考え方は「リーダーが変われば組織が変わる」ですから、横や下だけでなく、上にも連鎖的な現象があらわれた証拠でしょう。

開発部門ではトータル2シーズンにわたってTBLに取り組んだのですが、中には両シーズンを通じて自分の成長の手応えを得ることができず、苦戦していたリーダーもいて、彼が2シーズン目の最後、最終報告会の頃になってようやく手応えをつかみ、さらにそれを、彼の上司にあたる部長が心から喜んでいた光景が印象的でした。

チーム内に波及していくいい変化が、上の層にまで波及していくというのは、組織の風通しをよくする上では注目すべき効果だと感じます。そんな経験を通じて、Teambox LEAGUEをどう評価していますか?

私たちも、これまであらゆる「研修」を受けてきていますが、従来の研修は、非日常の場で行う印象が強かった。だから、その非日常の場に出かけていって、帰ってきたらもう終わり。またすぐにもとの日常に「リバウンド」するのが常でした。

でも、TBLは、Locker Roomでも、コーチングの場でも、「自分が、組織が、なぜこれを達成することができないのか?」という「弱さ」に徹底的に向き合わせられる。私たちは、「日常の場」で鍛えられるんです。だから、すでにTBLを終えて半年が経過しましたが、リバウンドは思いのほかないんですよ。もちろん、ちょっとは戻っているかもしれないですけれど、例えば「振りかえりは『GOOD』『BAD』『NEXT』の3ステップで」といったプロセスはしっかり体感としてインストールされています。その意味で、TBLはいわゆる従来型の「研修」ではないと感じています。

シーズンの最初から最後まで徹底して個に向き合いながら目標に向けて高めていく、「日常的な揺さぶりの仕掛け」。それがTBLだというふうに理解しています。

文章:古川雅子 写真:柏谷 匠
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